〔ゆきの自然を楽しむ〕
写真の説明文は中西正一先生の著書(ふるさとの人、自然とともに)の説明文をコピーさして頂いて居ます。
説明文の転載に付きましては、徳永真治元先生のご協力を頂いて居ます
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21「ハシリドコロ」(ナス科)
春になると「ハシリドコロによる中毒で亡くなった」という新聞記事を見ることがあります。ハシリドコロには猛毒があり、中毒すると走り回って苦しむことから名付けられました。私が初めてハシリドコロと出会ったのは一九九六・五・一三のことでした。油木町のある谷間の湿った木陰に美しい黄緑の葉を開き暗紅紫色のナスビに似た花を咲かせていました。初めて出会った野草に胸が高鳴りました。早速二本ほど採取して持ち帰りました。図鑑で調べ猛毒植物と知ると急いで手洗いしました。ハシリドコロは地下茎のロート根に猛毒を持っています。ロート製薬という会社をご存知だと思いますが、このロート根から鎮痛薬や目薬に使う物を取り出し目薬を作り出したのでしょう。ハシリドコロを知ることによって、初めてロート製薬とロート根が結び付いたのでした。毒は薬にもなるとよく言われますが、ハシリドコロのロート根から作り出した人々の研究の素晴らしさ、自然の物を生活に生かすために多くの犠牲をはらいながら役立つ物と役に立たない物を見極めて来た先祖の歩みに見習わなくてはならないと思うのです。
22「フクロウ」(フクロウ科)
野鳥は夏鳥・冬鳥・留鳥に大別されています。夏鳥にはツバメ・カッコウなどがいます。冬鳥にはツグミ・ウソなどがいます。留鳥にはスズメ・カラス・ヒヨドリ・キジ・メジロ・シジュウガラなどおなじみの鳥ばかりです。今回はこの留鳥の中のフクロウについて見てみましょう。フクロウは「コロスケホーホー」と鳴きます。夜行性の野鳥で夜にネズミやバッタ・小鳥などをとって食べます。大きな目をしていますが獲物を目で探すと言われています。だからフクロウにとって都合の悪い夜は雨の日・風の強い夜です。風雨で獲物の動きがさえぎられるからです。フクロウを日中に見かけることがありますが、前夜風雨がひどく獲物を捕らえることができなくておなかをすかしている時です。フクロウは人家近くの神社や森などにすんでいます。時にはかやぶきの人家にも巣作りをしヒナを育てることもあります。ヒナが家の中に落ちてくることもあります。写真のヒナも巣から落ちたものを育てたものです。鋭い目やくちばしや爪に似合わず愛嬌がありとても可愛い鳥です。ノネズミなどを食べてくれるフクロウは私たちにとって役に立つ存在です。
23「オオマツヨイグサ」(月見草:ツキミソウ)
「ツキミソウは、月が出る頃になるとバサバサッという音を出して咲くんだよ」と先生が教えてくださいました。小学校四年生か五年生の頃だったと思います。「月を見ながら夜に咲く」という先生の話に私はある月夜の晩、ツキミソウのそばに座ってじっと咲くのをながめていました。ところが、いくら待っても咲いてくれません。そのうちに眠くなるし、蚊はさすしであきらめて帰ってしまいました。月の色と同じような美しい色をしたツキミソウを見る度に子どもの頃のツキミソウとのにらめっこを思い出します。でも、残念なことに音を出して咲く姿をまだ確かめたことはありません。この夢のような先生の話をいつの日か必ずこの目と耳で確かめたいと思っています。ところで、ツキミソウはマツヨイグサの仲間でいずれも外国から入ってきた帰化植物です。日本には約十四種類が帰化していると言われています。ツキミソウは本当の名前はオオマツヨイグサなのですがツキミソウのほうがロマンチックで日本人の心がこめられているようで素敵に思います。明治時代に渡来して今では北海道から九州までの各地で普通に見ることができます。すっかり日本の顔となったツキミソウを眺めて見るのも楽しいものです
24「オオムラサキ」(タテハチョウ科)
暑い日のことでした。「めずらしいチョウを捕まえたので見てください。すぐに持って行きますから」という電話が入りました。どんなチョウだろうとドキドキしながら待っていると・・・透明なかごを大事に持って来られたのは安田の井元澄子さんでした。かごの中を見ると紫色の美しいチョウのためにとホタルブクロの花を入れられたお母さんの優しさに心を打たれました。チョウの名はオオムラサキでした。
オオムラサキは日本が誇る大型タテハチョウで、国チョウに指定されています。成虫は年二回発生し六月後半から七月にかけて現れクヌギの樹液やよく熟した果物等に集まります。この辺りでは台所や便所等にも飛び込むことがあります。雄のほうが美しい色彩を帯びますが、体は雌よりも小型です。また、雄は自分の縄張りに入ったチョウやカナブン、ときにはスズメまでも追いかけます。私はカラスを追い出したのを見たことがあります。幼虫はエノキの葉を食べます。油木町にはエノキがあちらこちらに生えているのでオオムラサキを見ることができるでしょう。国チョウ・オオムラサキがいつまでも飛び交うようにエノキと自然を残したいものです。
25「キツリフンネ」(ツリフネソウ科)
仙養ヶ原ではウメバチソウやマツムシソウが咲き始め、路傍にも、ヨメナやキキョウ・オミナエシやツリガネニンジンなど色とりどりの花が咲き誇る秋がめぐって来ました。今回は秋に咲く花「キツリフネ」を紹介しましょう。水田に流れ込む溝の周辺や湿地のいたる所にツリフネソウを見かけられる人は多いと思います。しかし、黄色のツリフネソウ=キツリフネを見かけられる人は少ないのではないでしょうか。ツリフネソウは花がちょうど舟を釣るように見える様子から名付けられました。キツリフネは、杉林や休耕田などの日陰に見ることができます。ホウセンカの仲間ですので、種が入ったさやに触れるとパンとはじけて種を散らします。この種を集めて家の周りの木陰にまいてみましょう。毎年のように花を楽しむことができます。野草の中にはキツリフネやカタバミのように種をはじく物・タンポポのように綿毛で飛ばす物・ヌスビトハギのように動物の身体にくっつく物など仲間を増やすためにいろいろな知恵を働かせています。このように、仲間を増やそうと努力する野草たちの生き方から多くのことを学ぶことも楽しいものです。
26「キバナアキギリ」(シソ科)
本州・四国・九州の低山地の木陰にはえる多年草。漢字では「黄花秋桐」と書き、黄色の唇形花を数段つてけ咲きます。秋になると不思議です。このキバナアキギリのような唇形花が多く見られます。花壇に栽培するサルビア、畑にはシソ、チョロギ、野山にはアキノタムラソウ、アキチョウジ、ナギナタコウジュなど、赤や紫色の花が多いようです。その中でもキバナアキギリは唯一黄色の花として価値があると思います。キバナアキギリの中でも葉のきょ歯がするどいものをコトジソウと呼んでいます。きょ歯を琴柱(コトジ)にみたててコトジソウと名付けられました。私は、近年、山歩きをしていて、キバナアキギリが黄色に咲いている中に、紅紫色の花のアキギリを見つけました。ツリフネソウにもピンク色、黄色、白色の花があるように花には突然変異としてその花の色とは違った色が出るものです。いままで
何気無しに見ていた花をよくよく観察してみると今まで気付かなかったことや知らなかったことを発見し感動するものです。花を遠くから眺めて見たり、近寄ってにおいをかいでみたりするように、私達も望遠鏡の目と顕微鏡の目を持ちたいものです。
27「モズ」(モズ科)
「もずが枯れ木で鳴いている おいらは藁をたたいている・・・」この歌をご存知の方は多いことでしょう。満州事変頃のできた歌だと聞いています。今年も木のこずえなどでキィー、キィーと鋭く鳴くモズの声が聞こえて来る季節を迎えました。耳をつんざくようなモズの鳴き声には、何かしら郷愁を誘われるものです。モズには、他の野鳥に見られない特別の習性があります。それは、秋になると「カエル、コオロギ、バッタ、ムカデ」をユズのとげなどに刺す”はやにえ”という習性です。モズが”はやにえ”をするはっきりとした理由は分かっていませんが、縄張りの印ではないかと言われています。モズは、秋冬には雌雄単独で縄張りを持ち一羽ずつで生活しています。餌の少ない寒く厳しい冬を生き抜いていくために縄張りが必要だったのでしょう。モズはスズメよりやや大きい野鳥です。雄は翼に白斑が目立ちますが雌にはこの白斑が見られません。時に私達が田畑を耕しているとモズが飛んで来て、電線等にとまりチュン、チュンと鳴きながら尾をくるん、くるんと回すことがあります。田畑の中から出てくる虫を捕りに来たのです。私達の身近なところにすみ、私達人間と共に生きているモズの姿を優しく見守ってやりたいものです。
28「テングコウモリ」(ヒナコウモリ科)
この辺りには、六種類のコウモリの仲間がすんでいます。飛ぶ姿は見ても実際の手にして見ることが少ないため種類を判別することは容易ではありません。コウモリの仲間は翼手類といいます。指の骨が長く、指の間には飛膜が張っていて、鳥のように空を飛ぶことができます。コウモリは、目が小さく視力も弱いのですが、口や鼻から超音波を出し獲物をとる優れた音波探知機の持ち主として知られています。今回、紹介するのは、「テングコウモリ」です。鼻が天狗のように突き出しているのでテングコウモリと名付けられました。おもに山地や森林にすみ、日中は洞窟や廃坑に一頭から数頭でひそんでいます。夕方になると活動を始め、ガや甲虫をとって食べます。私はテングコウモリを手にして見るのは初めてです。小野の神部弥幸さん(小学二年生)が持って来てくれました。子どもたちがこのように自然に興味と関心を示すようになるとゆきの自然の様子が少しずつ見えてきます。油木の素晴らしい自然を少しでも解き明かしていくために町民の皆さんの小さな力が必要です。そして、油木の素晴らしさをより多くの子どもたちに伝え、油木に誇りが持てる子どもたちに育てていきたいものです。
29「ヤツデとヒメシロコブゾウムシ」(ゾウムシ科)
「そんなところに登ると折れるじゃあないか」と大声で叱りました。細いヤツデの木に一人の男の子が登っていたのです。「ゾウムシを採っているんです。この木にしかいないんですよ」「えっ。ゾウムシ?」何のことか分からずにポカーンとしている私に男の子は木から降りてくると手のひらから白色の虫を出しました。「先生これは、ヒメシロコブゾウムシです。知らないのですか?」と不思議そうに私の顔をのぞきました。「こうやると面白いよ」と男の子は廊下にその虫をはわせました。虫は急いで逃げようと早足で廊下を歩きます。しばらくすると、その男の子が廊下をトンとたたくのです。するとどうでしょう。虫はころんと転がって仰向けになり死んだようにじっとするのです。ヤツデを見る度に十年も前の新坂小学校での男の子との出会いを思い出します。みなさんも夏になったらヤツデの木にいる真っ白のヒメシロコブゾウムシを探して見てください。きっと見つかると思います。ところで、ヤツデは秋の終わり頃に白い花を咲かせます。他に花がない季節ですからハチが群がる姿をよく見られることでしょう。花が咲いていつ実が付くのだろうと不思議に思われるでしょう。じつは、果実は球形で翌年の初夏に熟して黒くなるのです。面白いですね。
30「ミノムシ」(ミノガ科)
ミノムシは、ミノガの幼虫が木の葉や小枝で作った「巣」の状態のことで、蓑の虫という意味があります。ミノムシは冬の風物詩として誰にでも親しまれてきました。皆さんもきっと手にされたことがあるでしょう。ぶらりミノムシ 死の影そろり 西日本、全滅の危機
という見出しの朝日新聞(一月十二日)の記事が飛び込んできました。中国から入って来たと見られる天敵の寄生バエが猛威を振るっているというのです。このハエは現在、九州をはじめ中国地方、四国や大阪、名古屋、東京などに広がっています。私は早速ミノムシを探してみました。チャミノガ(写真のもの)は見つかるのですが、オオミノガの蓑は見つかりません。絶滅の危機とは「オオミノガ」のことでした。オオミノガが主に木の葉で蓑を作り、ぶら下がるのに対して、チャミノガは主に小枝で蓑を作り、木の枝からぶら下がらずにぴったり付着しているので区別がつきます。本当にオオミノガがいないのか、みなさんも調べてみてください。ところで、ミノガの仲間は約三○○種が分布し、日本には約一○種が分布していると言われています。オオミノガが中国からのせ寄生バエによって絶滅されるように、環境問題は国際的な問題としてクローズアップされています。