〔ゆきの自然を楽しむ〕
写真の説明文は中西正一先生の著書(ふるさとの人、自然とともに)の説明文をコピーさして頂いて居ます。
説明文の転載に付きましては、徳永真治元先生のご協力を頂いて居ます
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81「ヤマシャクヤク」(ボタン科)
油木町にはヤマシャクヤク(白色の花)とベニバナヤマシャクヤク(淡い紅色)の二種類があります。どちらも大変貴重な花です。特にベニバナヤマシャクヤクは広島県の絶滅危惧種に指定されているほどです。私はヤマシャクヤクは知っていましたが、ベニバナヤマシャクヤクが自生しているとは知らなかったので、初めて見かけたときには実に驚きました。「世には珍しい素晴らしい花があるものだ」とそっとしておいたのですが、砂防堤の工事により掘り取られたり、土砂で埋まったりして今では姿を消してしまいました。誠に残念なことです。ヤマシャクヤクもベニバナヤマシャクヤクも落葉広葉樹林に自生し、どちらも高さ四十〜五十cmになる多年草です。初夏になると、茎の先に径四〜五cmの白色・淡紅色の可憐な花を一個付けます。ヤマシャクナゲは雌しべの柱頭が短く、少し外側に曲がるだけですが、ベニバナヤマシャクヤクは長く伸び著しく施曲します。これらの花はいずれも落葉広葉樹林が広がる谷間に自生しています。田畑の出来ない谷間だったのが幸いして自生し続け守られてきたのでしょう。このように、狭い谷間は我々人間にとって役立たないと思われがちですが、貴重な美しい花が自生できる宝庫として役立っているのです。
82「ウノハナ」(ゆきのした科)
「ウノハナの匂う垣根に ホトトギス早も来鳴きて 忍び音漏らす 夏は来ぬ」と歌にも歌われているウノハナが咲く季節を迎えました。皆さんはウノハナのことをウツギと呼ばれていると思います。これは、幹が中空であることから「空木」ウツギと言われるようになりました。子どもの頃、ウツギの枝葉を落とし、一本の幹だけにした剣を振り回して遊びました。ピューッ、ピューッと空気を切る音が出るので「真空切りだ」と赤胴鈴之助のまねをしたものです。そして「剣をとっては日本一の 夢も大きな少年剣士 親はいないが元気な笑顔 弱いものには味方する がんばれ強いぞ 僕らの仲間 赤胴鈴之助」と大声を張り上げて歌いました。すっかり正義の味方になったつもりだったのです。あの中空のウツギにも利用価値があるものです。この辺りでは大きなウツギは太鼓の「ばち」として重宝がられています。ところで、最初の歌に歌われているようにウノハナが咲く季節になるとホトトギスが渡ってきます。「父ちゃん転けたか尻でも打ったか」「てっぺん欠けたか」と鳴くのがホトトギスです。ホトトギスはご存知のように托卵する鳥として知られています。にぎやかに鳴き叫んでは、静かにそっと忍んで行って他の鳥の巣の卵を産み付けます。そして、他の鳥に子どもを育てさせるのです。ホトトギスはとても正義の味方とは言えませんね。いずれにせよ、昔から自然の姿を歌い季節を感じ取り、遊びを通して心を育み、物を作る姿を見て自然を生活に活かす方法を学んだのでしょう。
83「ヤマカガシ」(ヘビ科)
マムシは毒蛇として知られていますが、この辺りには、もう一匹毒蛇がいます。それが、ヤマカガシです。子どもの頃から「シバカリヘビ」だと教えられました。秋に芝刈りをしているとよく見かけたからでしょう。「ヤマカガシが毒蛇?噛まれたこと無いよ」と言われるでしょう。それもそのはずです。毒牙が口の奥の方にあるため、口の中に指をつっこまない限り噛まれることはありません。しかし、子どもは面白半分に指を口の中に入れて噛まれることがあります。口の奥の方には小さな牙があり、深く噛まれると上顎のデュベルノア線から毒が傷口から体内に入ります。噛まれてから十分後に意識不明になった例もあるからかなり強い毒です。毒のため、内臓出血、脳内出血などを起こして死亡することもあります。また、首の後ろのある頸腺を強く押さえると黄色い毒液を出し、これが傷口や目にはいると危ないので注意しましょう。ヤマカガシに手を出すとコブラのように首から腹の一部を広げて威嚇します。ヤマカガシはカエルやオタマジャクシを好物にしています。また、水によく潜り魚も食べます。ヘビが好きな人はあまりいませんが、周りに敵がいっぱいいる中でヘビたちも懸命に生きているのです。
84「サイハイラン」(ラン科)
ランの仲間は、花の中でも最も美しいと言われています。油木町においてもたくさんのランの仲間が自生しています。しかし、美しい花だけに乱獲され、どんどん無くなってしまいました。各種のエビネ、クマガイソウ、アツモリソウ、キンラン、ギンラン等々そのほとんどが姿を消しています。自然の花は、自然が一番。自生していた場所、その環境が一番いいのです。この度は、貴重なランの仲間の一つであるサイハイランを紹介しましょう。花は決して美しいとは言えませんが、花穂の中の一つ一つの花をよく観察すると可愛いなとおもいます。
サイハイランは、花全体が采配に似ていることからサイハイランと名付けられました。花を見るとなるほどとうなづけると思います。ランの仲間には葉のない無葉ランもありますがサイハイランは葉がとても美しいのです。一枚の葉に一つの花穂を咲かせます。葉が一枚だけだから花穂は派手やかに一生懸命に花をたくさん付けるのでしょう。一つひとつの花を見るとき、葉と花の関係に目を向けて見るとまた面白いものです。〜この葉ありて、この花あり〜・・・ 〜この親ありて、この子あり〜・・・花一つからも人間の有り様を考えさせられます。
85「キツネノカミソリ」(ひがんばな科)
八月〜九月にかけて、油木町内の各地に見られる花です。この花を見ていると口元がとがったキツネに見えてきます。そして、薄暗い中に黄赤色に群がって咲くこの花に圧倒され、キツネにだまされたような気持ちにもなってきます。「美しいなあ」と言うより「気味悪いなあ」と言った方が良いかもしれません。この花は、有毒植物としても知られているので、採取して飾る人も少ないようです。ところが、この花には面白いこともあります。晩春から初夏にかけて見られていた葉は枯れてしまいます。葉が枯れてしばらくすると花茎を出し、花を咲かせるのです。だから、夏に草刈りをしたとしても刈り取られる心配はありません。それもそのはず、草刈りをする頃には、葉は枯れ、花芽はまだ地中に潜んでいるのですから。もう一つ、面白いことを見つけました。それは、白花のキツネノカミソリがあるということです。赤い花があれば白い花があると言われますが、めったにない白花を見つけたときは、正にキツネにだまされた思いでした。以前にも書いたことがありますが、これらの花は、球根で増えるので、春から秋にかけて咲く花の球根を違えて植えてみてはどうでしょうか。スイセン・・・ユリの仲間・・・ナツズイセン・・・キツネノカミソリ・・・ヒガンバナというふうに。季節と共に変わり行く花の風情を味わうのも面白さの一つです。
86「アサギマダラ」(マダラチョウ科)
油木町にも多くの蝶が棲息しています。蝶の魅力は何と言っても羽の美しさでしょう。ところで、蝶を手につかむと蝶の粉「鱗粉」が手につきます。鱗粉はどのような形をしているのでしょう。鱗粉を顕微鏡にかけて見ると驚きます。子ども達に見せると「コスモスの花びらみたい」と言います。その通り、蝶の粉「鱗粉」の一つひとつがコスモスの花びらのように見えるのです。蝶の羽の模様は、何億もの鱗粉の一つひとつが規則正しく並んでできているのです。卵・・・幼虫・・・蛹を経て静かに静かに鱗粉が形成され、あの美しいチョウチョが誕生するのですから本当に不思議です。どのようにして鱗粉の一つひとつができていくのでしょうか。しかも蝶の種類によって同じ模様ができていく。誠に不思議です。今回、紹介するアサギマダラを見られたことがありますか。何百キロもの遠くまで渡りをする蝶として有名です。羽の白い部分のマジックなどで印を付けて、どこからどこまで渡って行くのかなどの研究が研究家の手で進められています。アサギマダラは、この辺りでは希にしか見られませんが、今年は仙養と井関で採取できました。ふわりふわりとゆるやかに滑空するので目立ちます。夏から秋に山地から人里に降りてきて、ヒヨドリバナやコスモスなどを訪れます。幼虫・蛹で冬を越すと言われていますが、広島県下ではまだ確認されていません。秋も一段と深まって生きますが、蝶たちは今年最後の花を楽しんでいるのです。
87「ミョウガ」(ショウガ科)
もうかれこれ十年も前のことだったと思います。安田の後山形の後藤さんが「先生、不思議な花を見つけたのですが、見にきてください。」という電話をくださいました。早速行って見ると、今まで見たこともない真っ赤な妙な物が土手に幾つも開いていました。海にいるヒトデのように見えました。「ここはミョウガがたくさんはえていたのを草刈り機でかったのです。だから、これはミョウガの花でしょうか」と尋ねられるのでした。わたしもミョウガの花は知っていたのですが、このような妙な花は見たことがありませんでした。このときの様子は中国新聞にもカラー写真で紹介されたので記憶されておられる方が多いと思います。今年、また、このミョウガのことが新聞で報道され、昔の記憶がよみがえって来ました。みなさんもご存じのようにミョウガは大きな淡黄色の花を咲かせます。盛夏にミョウガの芽を採りに行き、この花に出くわした経験をお持ちの方は多いことでしょう。写真をご覧ください。赤く見える部分は果皮が開いたところです。果皮の中に見える目玉のような物が種子です。種子は黒色ですが白色の仮種皮をかぶっています。「花が咲けば実がなり、必ず種ができる」と言いますが、あまり見ることのできないミョウガの果皮の真っ赤な裂開と目玉のような種子にミョウガは妙だと思うのです。全く自然の姿は絶妙ですね。
88「モクレン」(モクレン科)
「これは何でしょう?」これは、モクレンの袋果です。中に見える朱色の物が種です。モクレンの花はよく知っていたのですが、種までは知りませんでした。モクレンの紅葉した葉が散る頃、この袋果と種が目立ち始めます。袋果は成熟すると開裂して白色の意図によって朱色の種を垂れ下げます。そうして種を飛ばし仲間を増やしていくのです。モクレンの仲間には、コブシ、ホオノキ、シキミ、ダイサンボクなどがあります。コブシは、春、新芽が出るよりも早く開花し山々を白く彩ります。油木町では三和町に接する上野の山に多く見られます。ホオノキは、町内の各地に見られますが、町中では、福鞆信用金庫のお庭にあるホオノキが見事です。シキミは仏壇にお供えするので栽培もされています。この他、油木有本の渡辺さん宅に咲き誇るヒメコブシは実に見事です。ピンク色の花が爛漫と咲く姿に圧倒されます。おばあさんに苗木を分けていただき植えているのですがなかなか大きくなりません。でも、渡辺さんの家のヒメコブシのような姿を夢見て世話をしています。花が咲けば必ず実ができ種を落とします。しかし、花から種までの草花や樹木の一生を知る人はあまりいません。実や種を採取して草花や樹木を育てるのも楽しいものです。今は亡き西道区の森岡のおじいさんがヒノキに登ってヒノキの実を採取されていた姿が懐かしく思い出されます。
89「サル」(哺乳類・・・サル科)
明けましておめでとうございます。今年は、いよいよ神石高原町がスタートする年です。「ゆきの自然を楽しむ」のコーナーも今年が最後だと思います。ゆき町の皆様に「ゆきの自然の素晴らしさ」を少しでもお伝えしようと連載してきました。ご愛読いただきまして誠にありがとうございます。残すところわずかだと思いますが、一生懸命かきますので宜しくお願い申し上げます。さて、今年は「サル年」です。ゆき町では自然の中でサルと触れ合えるのでサルとの楽しいお話が伝えられています。いたずらザルを、毎日のように大声で追い払っていました。留守にしたある日のこと、帰宅してびっくり、サルたちがやってきて小屋の瓦を投げていたお話。棚田の稲刈りをしてハデにかけていきました。ふと気がつくと、せっかくかけた稲束をサルが担いで逃げていたお話。あまりにも悪いことをするので、猟銃で撃とうとしました。すると、サルが「どうか命ばかりはお助けを」と両手を合わせて拝んだお話など滑稽なお話ばかりです。数年前、私の家にも初めておサルさんが来てくれました。屋根を渡り歩いたり、小屋においてあるイモを食べたりしました。近寄ると牙をむきだし威嚇しました。もっと近寄ると追っかけてきました。写真は、その時のおサルさんです。サルもさるものです・・・。日本人もさるものだな・・・。と諸外国の人々から尊敬される年にしたいものです。
90「お金のなる木」(ベンケイソウ科)
厳寒で花のない時期にお金のなる木は花を付けます。一月のある日のことでした。私は、安田小学校の校長室を訪れました。校長室に入ったとたん見事に咲き誇ったお金のなる木に目を奪われました。今川校長先生が丹誠込めて育てられたものでした。「校長先生、本当の名前は何というのですか。それにしても見事に咲きましたね」と言うと「今年、初めて咲いたんですよ。本当の名前は分かりませんがね」と笑顔で応えられるのでした。この植物は新芽に五円玉を刺しておくと五円玉を抱えこんだまま葉が大きくなっていきます。だから、お金のなる木と名付けられています。油木郵便局にも大きなお金のなる木があります。意外に寒さにも強いことから育てられる方も多いと思います。私は、見事に咲いた花をよく観察して見ました。花びら五枚、雄しべ五本、雌しべ五本で雌しべのもとには甘い蜜がたくさんありました。この寒さの中でも蜜をしっかり出して虫たちを呼んでいるのだなと感心させられました。今年は、この花のように華々しく景気が回復するように祈りました。ところで、お金のなる木の本当の名前は「黄金花月」と言います。クラスラとも呼ばれています。ベンケイソウ科の仲間はオウゴンカゲツのように葉が肉厚になっています。油木町が誇るクロツバメシジミという蝶の食草となっているツメレンゲもベンケイソウ科です。