〔ゆきの自然を楽しむ〕
写真の説明文は中西正一先生の著書(ふるさとの人、自然とともに)の説明文をコピーさして頂いて居ます。
説明文の転載に付きましては、徳永真治元先生のご協力を頂いて居ます
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31「ツチグリ」(ツチグリ科)
夏から冬にかけて、山野、庭園、路傍などに皆さんがよく見かけられるのは、ホオズキの皮をむいだような状態のツチグリだと思います。ツチグリは初め球状の形をしていますが、成長すると上部から下方に向かって六〜十二個の裂片に裂けます。吸湿性の裂片は、湿気を含むと反捲して地上に爪立ったようになります。(写真上)それを人間や動物たちが踏むと球状の先端の穴から煙のようなものが飛び出します。その煙はツチグリの胞子です。ツチグリは誰かに踏んでもっらて胞子を出し仲間を増やしていきます。反対に乾燥すると裂片は上向きに巻き球状になります。(写真下)風が吹くと地上をころころ転がり、そこら中に胞子をばらまき仲間を増やしていきます。湿ったら爪立ち乾いたら円くなるツチグリは、湿度計の役目をしています。湿ったり乾いたりで自由に形を変えて仲間を増やしていくツチグリの姿を見ていると「自然は実にうまくできているなあ」と感心させられてしまいます。これらの自然物の現象からヒントを得て人間生活に役立つ物も多く作られています。自然をよく観察し面白いおもちゃや飾りそして器具を作ってみませんか。
32「ヒトリシズカ」(センリョウ科)
四月から五月にかけて咲くヒトリシズカはセンリョウ科の多年草です。やや湿り気のある明るい林に自生し、春、地中から芽を出すと四枚の輪生する葉の真ん中から白い花をのぞかせます。源頼朝の前で義経を慕い、一人舞台に立ち、過酷な運命に耐え、世間の片隅で生き抜いた静御膳。ヒトリシズカの名前には、遠い歴史の悲しくも哀れなお話が込められています。 草籠に一人静も刈られたる   秋櫻子
人がどのような思いでヒトリシズカを刈り取ろうと、花は自分の命を精一杯に咲き続けます。人生は楽しいことばかりではありません。どちらかというと辛いことのほうが多いものです。そんな時、木陰で辛抱して咲くヒトリシズカを見ると「辛くても我慢して生きるんだよ」と励まされます。この辺りでは、ヒトリシズカに少し遅れてフタリシズカの花を見ることができます。ヒトリシズカの花がビンの中を洗うブラシのような形をしているのに対してフタリシズカの花穂は白いごま粒をつけたように見えます。比べてみましょう。ヒトリシズカの葉は生のまま、あるいは干して煎じると、一種のハーブティーになります。よい香りです
33「ヤマブキソウ」(ケシ科)
ヤマブキに似た草という意味からヤマブキソウと名付けられました。黄色の美しい花でヤマブキにそっくりですが、よく観察してみると花弁の数が違っています。ヤマブキの花弁が五枚あるのに対してヤマブキソウの花弁は四枚です。すっかり有名になったカタクリが咲き終わった頃、谷間を黄色のジュータンに変えていきます。上野小学校の子どもたちが研究したブチサンショウウオのせい息する谷では、一面にヤマブキソウが咲き誇ります。この美しい花に囲まれながら研究をした子どもたちはブチサンショウウオと共に忘れ得ぬ花として心に刻んでいることでしょう。子どもたちにはたとえ花の名前はわからなくても「きれいだなあ。なんという花だろう」と顔を近づけてみたり嗅いでみたりする感動体験が大切です。ヤマブキソウは、石灰岩の岩山がそそり立つ谷間でよく出会えます。種を採取して少し湿り気のある庭先にまいておくと、ヤマブキソウの花を咲かせることができます。近年、野草ブームで谷間の貴重な花が掘り取られていますが、花を取らずに種を採取して育ててほしいものです。野草はどこにでも生えるものではありません。美しく咲くための環境を選びます。花を守るのも育てるのも私たち人間の考え方一つにかかっています。
34「ノアザミ」(キク科)
「山には山のうれいあり海には海の悲しみや まして心の花園に 咲きし アザミの花ならば」・・・あざみの歌に登場するあざみはノアザミのことです。路傍に咲くこの花は誰からも親しまれてきました。子どもの頃、この花を切り取って逆さまにして手のひらでポンポンとたたいた思いではありませんか。不思議にも手のひらに黒色の小さな虫が出てくるのです。手のひらをはう小さな虫を牛と言い、ピンピンはねる虫を馬と言いました。花を手のひらでたたいては「牛が出た」「馬が出た」と言いながら遊んだものです。きっと皆さんにも同じ思い出があることでしょう。ところで、アザミの世界にも大きな変化がみられます。一九七○年代頃からヒレアザミという茎にひれのあるアザミが増えてきました。ピンクや白の花が咲くこの花は、本来、低地に咲いていたアザミですが、出稼ぎが激しくなるにつれてこの辺りにも広がってきました。一方、谷間の水田の辺りや湿地に生えているサワアザミは、休耕田の増加と共に減少し、これを食草として生息していたヒョウモンモドキという蝶は絶滅してしまいました。環境の変化はこの地方にしか生息していない貴重な動植物までも滅ぼしていくのです。
35「ジネズミ」(トガリネズミ科)
「モグラかネズミかよくわからないのですが捕まえているのです。見てもらえませんか」とあるお母さんからの電話がかかりました。「鼻や口のところがとがっているので、モグラだとおもうのですが。」「しっぽはどうなっていますか。前足はどうなっていますか。」と聞くと、「しっぽはネズミのように長いです。前足はモグラとは違うようです」電話のやりとりではよくわからなかったので、翌日の朝、持って来てもらうことにしました。   たかがネズミ  されどネズミ
翌朝、お母さんと六年生の女の子が持って来た物を見ると、本当に、口先がとがっているのでモグラのようです。しかし、しっぽはネズミのようです。女の子は一生懸命ミルクを飲ませています。お母さんも不思議そうにしています。いろいろ調べた結果、ジネズミとわかりました。「ネズミなんて・・・」と子どもの興味や関心をそいでしまいがちですが、ジネズミをめぐってお父さんもお母さんもお爺さんもお婆さんも子どもたちも一家をあげて一生懸命になられる姿に接し、すがすがしい気持ちになりました
36「ハッチョウトンボ」(体長18cm)
    日本最小のトンボ発見

油木町も自然が豊かですね。休耕田でハッチョウトンボを見つけました。ハッチョウトンボは、日本に分布する最小のトンボとして知られています。成虫は五〜九月にあらわれます。体長が十八mmの小さなトンボですから、ハエが飛んだようでなかなか見つかりません。よくよく目を凝らして見るとやっと見つかるほどの大きさです。雄は成熟すると体が赤くなるので見つけやすいのですが、雌はなかなか見つけるのが大変です。雄は目立つことによって雌を守っているのでしょう。野鳥も雄が美しいのと同じことです。ところで、トンボにもオニヤンマ、シオカラトンボ、アカトンボ等いろいろいます。トンボが育つには、池や沼地や水田等の湿地が必要です。特にハッチョウトンボ等は、環境に敏感で湿地に生える草が生え過ぎたり、大きくなり過ぎたりすると棲息できなくなります。油木町では、ハッチョウトンボに次いで体長二十五mmのモートンイトトンボが棲息しています。このトンボも短い草がまばらに生えた湿地に棲息しています。湿地に流れ込む水がきれいで冷たい水でなくてはいけないようです。今油木町に何種類のトンボが棲息しているか調査中ですが、きっと沢山の仲間が棲息していると思います。楽しみに調べています。
37「サワギキョウ」(キキョウ科)
    秋の深まりを感じる青紫色の美しい花

「キキョウ科の仲間には、どんな野草がありますか」と聞かれたらすぐに思い浮かべられるのは、キキョウだと思います。紫色のキキョウの花を見ると秋の深まりを感じさせられます。この辺りにはキキョウより他にシデシャジンやヤチシャジンという花もあります。ヤチシャジンは、もう油木町から姿を消したことでしょう。ところが、サワギキョウは、休耕田が増えるに従ってあちらこちらで見られるようになってきました。サワギキョウはキキョウの仲間だとは思えない花の形をしていますがキキョウと同じく青紫色をした美しい花です。皇后様のお好きな花としても有名です。水揚げの良い野草ですので生け花としても素晴らしいと思います。キキョウの根は昔から食用にし、強壮、気つけ等の民間薬に使われてきましたが、サワギキョウにはロベリンという毒があるので食べないようにしましょう。休耕田等湿地帯を好んで生えるサワギキョウは挿し木でも増やせるので楽しいですよ。多年草ですから大きな株になると実に見事です。サワギキョウのように湿地帯を好む野草は美しいものばかりで、シラヒゲソウやトキソウ等があります。ところが、この湿地がだんだんと減少し油木町から姿を消しています。自然の力でできた湿地は湿地として存続するように人の手で守っていきたいものです。
38「ツリフネソウ」(ツリフネソウ科)
    帆かけ舟のようなユーモラスな花

ツリフネソウは油木町の至るところで見ることができます。ピンク色に染まったこの花の群落に出会うと感激します。湿地に生えているので容易に抜くことができます。しかし、茎が折れやすく傷付けないように採るのは大変です。それよりも一年草ですから種を採取して育てる方が早道です。時々ピンク色の花に混じって白色のツリフネソウを見かけることもあります。ツリフネソウはぶら下がった花が帆かけ舟に見えることから名付けられました。ユーモラスな名前ですね。この花をよく見ていると面白いことに気付きます。ぶら下がった筒状の花のしっぽが巻き貝のようにくるくると巻き込んでいることです。さらに良く見ているとハチがこの花のしっぽの部分に集まってくることです。実は巻き貝のように巻き込んだ花のしっぽの部分から甘い蜜を出しているのです。ツリフネソウと同じ仲間にキツリフネやホウセンカがあります。これらの仲間に共通していることは、よく熟した実をつまむとぱっと開いて種を飛ばすことです。茎をゆるがしただけでもはじくことがあるので面白いですよ。自然いっぱいの油木町です。子どもたちにも、小さい頃から、これら植物が持っている不思議さや面白さに直接触れあい感性豊かな子どもに育ってほしいものです。
39「トリカブト」(キンポウゲ科)
トリカブト・・・何を連想されますか。この花は、烏帽子(えぼし)のような紫色の美しい花の裏に恐るべき猛毒を隠しています。猛毒の主成分はアコニチンなどです。漢方ではトリカブトの母根を烏頭(うず)子根を附子(ぶす)といいます。小学校六年生では国語で附子という狂言を学びます。この狂言の「附子」は、主人が砂糖をぶすだと言って太郎冠者、次郎冠者に預けて外出します。ところが両人は、大事な物を壊したので死んでお詫びをしようと全部食ったのだが、まだ死ねないと主人に嘆いてみせます。子どもたちは屈折した狂言の面白さに触れながら伝統的な日本の文化の面白さを学んでいきます。このように、トリカブトは猛毒を持つ植物として昔から知られていました。トリカブトは不老長寿の薬としても知られていますが、調合を間違うと死に至らしめます。このような恐るべきトリカブトですが花は大変美しくリンドウと共に秋を彩る花として味わい深いものです。油木町でもごく限られた場所に自生しているのを見かけることがあります。自然に生えていて美しいこれらの野草を写真に撮ったり描いたりするのも面白いのではないでしょうか。
40「マムシグサ」(サトイモ科)
この辺りではヤマゴンニャクと呼ばれているのがマムシグサです。茎に紫褐色のまだらがあってマムシに似ています。秋になると赤く熟した実に出会うことがあります。子どもの頃、この実を採って便所に投げ入れた経験を持たれている人も多いことでしょう。ウジムシを殺すのだからどんな味がするのだろうとなめてみたことがあります。とっても辛い味がしました。ムカゴと間違えてコンニャクを食べた経験もあります。口の中はパニックでした。家の台所に飛び込むと水でうがいをしたり、塩水や色々な物でうがいをしましたが治りません。やっとの思いで考えついたのがソーダでした。「そうだ。ソーダだった」という訳です。青年になったある日のことでした。母が私の好物であるミツバのおひたしを出してくれました。早速たべると辛いような刺すような刺激が口の中に広がりました。「母さん、何か変な物を入れなかったか?ひょっとするとマムシグサを入れたんじゃない」と聞くと「そんな物入れるはずがないよ」と応えます。私は、子どもの頃に食べたことのあるコンニャクやマムシグサの味を思い出していました。私は、急いで母が採取した場所に走りました。案の定、ミツバが群生した中に小さなマムシグサが混じっていました。母はミツバをつんだ時、間違ってマムシグサもつんでいたのでした。このように、体を通して学んだことは色々な場面で役立つものです。子ども達にも色々な体験をさせたいものです。